人情薫るまち、有壁②史跡&食事処編

人情薫るまち、有壁②史跡&食事処編

更新日: 2024年02月19日(月)

こちらの記事は、『人情薫るまち、有壁①まちあるきツアー編』の続編となっております。

ぜひ、前編からご覧ください。

 ▷▶『人情薫るまち、有壁①まちあるきツアー編』https://visit-kurihara.travel/features/20

金成

熊口五輪塔

熊口五輪塔

JR有壁駅から有馬川に沿って南東へと進むと「熊口五輪塔(くまぐちごりんとう)」という神秘的なフォトスポットが存在する。

小川

熊口五輪塔の入口そばには1軒の民家があり、そこで暮らすご夫婦が先祖代々熊口五輪塔のお世話をしているんだとか。地域の人たちの協力もあり、長きに渡り存在し続けている神聖な場所だ。

また周辺を流れる小川には、近年では希少となった源氏蛍(げんじぼたる)と平家蛍(へいけぼたる)が生息していて、毎年夏になると蛍たちの幻想的な世界が広がるそう。普段出会えない生き物たちと触れ合えるのも魅力の1つ!

熊口五輪塔への小道

熊口五輪塔へは、ご夫婦がお住まいの敷地内にある細道から上へと登っていく。到着時にどこから登っていくんだろう?と、迷ってしまうかもしれないが大丈夫。熊口五輪塔の看板そばを通る道から上へと進もう。もしご夫婦を見かけた際には、元気よく『行ってきます!』の声をかけてから出発しよう!

石行燈

苔の生した雰囲気のある山道を登り、入口から約7、8分程度で熊口五輪塔が建てられている場所に到着。そこには丸みを帯びた大小さまざまな石が広範囲に積み上げられていて、中央には小さな石行燈(いしあんどん)のようなものがちょこんと顔を出していた。これが五輪塔であり大昔のお墓の役割を担いつくられたそう。

5つの五輪塔

周囲には5つの五輪塔が存在し、それぞれ微妙なデザインの違いがあるのだそう。実際に比べてみると微妙な違いを発見するものの、かなりの時間が経過しているので見分けるのはなかなか難しい。また、積まれている石の中には現代でも解明されていない「お経」が刻まれたものがあるんだとか。しかし相当な石の数があるので、筆者は見つけることは叶わなかったが、運が良ければ発見できるかもしれない!?(※石の移動や持ち帰りは禁止です。)

紅葉と五輪塔

また、季節ごとにさまざまな景観を楽しめるのも五輪塔のおすすめポイント。筆者が訪れた時期は11月上旬だったため、地面には美しい苔のカーペットが敷かれ、木々の葉っぱも黄色や橙色に染まっていたころ。そこに差し込む太陽の光と、五輪塔の不思議な雰囲気が全体を神秘的な空間にしていて、シャッターを切る手を止められなかった!写真が好きな方には、ぜひおすすめしたい素敵なスポットだ。

山の中のため訪れる時期ごとに発生する害虫や動物に気をつけて、しっかりと準備を整えてから向かおう!

貴船神社

貴船神社の看板

「貴船神社(きふねじんじゃ)」と聞くと、京都府鞍馬山にあるものを想像してしまうが、水神様を祭る貴船神社が実は宮城県栗原市の有壁地区にも存在する。

場所は「旧奥州街道 有壁宿」から有馬川に沿って、東側へずっと行った先の山奥にあるのだが、入口には「貴船神社」の看板が建てられているのでとてもわかりやすい!

貴船神社

京都の貴船神社が元となっているため、同神社に祀られているのは水の神様。そのため大昔から地域の人々が五穀豊穣を願って、雨乞や止雨の祈願をするために訪れていたそうだ。ちなみに同神社の左右の柱に取り付けられている「縄」は、有壁のワラを使用して地域の人たちが手作りで仕上げたもの。

貴船神社

約十数年前までは毎年春(4月)と秋(9月)の19日付近の休日に例大祭が行われていた。春の例大祭では、中に納められている神輿(みこし)を担いで、五穀豊穣を願い有壁地域を練り歩いたそうだ。しかし最近(2020年以降)では若者の地域離れなどの影響もあり、神輿の出番はしばらくない状況だそう。筆者は有壁地域の景色に、また神輿の姿が復活することをそっと祈願・・。

貴船神社の小屋

そして同神社を訪れた際にぜひ注目してほしいのが、敷地内にポツンと建つ1軒の小さな小屋の存在。一見、なんの変哲もない小屋に見えるのだが・・・

旧神輿堂

これは旧神輿堂で、よく見てみると下部からたくさんの木片が溢れるように積まれていて、更にじっくりと観察してみると・・木片は「舟」の形に削られているのだ。

これは病を患った子どもを持つ母親たちが、我が子の病状を和らげ治癒を祈願し奉納していたもの。母や父の手で舟を彫り、そこに子どもの病魔を乗せ、海へと流すという意味が込められているそう。

有壁地区に伝わる貴重な伝説の1つが、現在も貴船神社にしっかりと残されているのだ。

訪れた際にはお参りのほかにも、ぜひ周辺を観察してみよう!

そば処本陣

そば処 本陣

「旧奥州街道 有壁宿」の一番南端にあたる場所には、有壁宿のスタート地点として「南柵」と書かれた黒いゲートと、「小桜清水(こざくらしみず)」と呼ばれている丸と四角い形をした水場が存在する。そこから徒歩2、3分の場所に地元民も足繁く通う蕎麦屋「そば処 本陣」がある。蕎麦の香りと喉越し最高の絶品十割そばが食べられるのだ。

そば処 本陣

『旅人の空腹は本陣の美味いそばで満たす!』そんな名言が浮かぶほど美味しい蕎麦に加え、「旧奥州街道 有壁宿」沿いにしっくりと馴染む素敵なお店なのだ。

お店は敷地内のやや奥の方にあり、手前側には駐車場がしっかり完備されているので、もしもまちあるき(徒歩)以外で訪れた場合でも安心。

そば処 本陣 店内

店内には4人掛けテーブルが3卓に、2人掛けが2卓。それ以外に小さなお座敷スペースもあるので、5、6人のグループで来店した場合でも利用が可能だ。あたたかな暖色系の照明と壁にはテレビも設置してあるので、ついつい自宅のように寛いでしまいたくなる居心地の良い空間が広がっている。

 

同店では蕎麦をはじめ米や野菜なども自家生産・栽培していて、ご主人は朝から晩まで半分農家をやりながら、奥様と二人三脚でお店を切り盛りしている。ちなみに現在の蕎麦屋をスタートしたきっかけは、奥様の『蕎麦屋をやらない?』の一言だったそう。その後に関東圏まで足を運んで、時間をかけて店々をまわりながら蕎麦を含め、天ぷらについても研究を重ねたという。

十割蕎麦の天ざる

お店の一押しメニューは「十割蕎麦の天ざる」。一般的に十割蕎麦と聞くと、蕎麦粉の割合が高いという点で食感はややボソボソとした印象を抱いてしまうが、ここの蕎麦は違う!

十割蕎麦の天ざる

口当たりはとてもツルンとしていて、心地良い歯応えまでも美味しい。そして、なにより蕎麦の香り高いこと・・!この爽やかな香りが、一緒にいただく甘めでこっくりとした「つけダレ」の味によく合う。

十割蕎麦の天ざる

蕎麦と並んでおすすめなのが、ご主人が研究を重ねた「天ぷら」。

季節によって天ぷらの材料(野菜など)は変わるそうで、筆者が訪れた際には「かぼちゃ」が入っていたのだが、これが美味しかった!薄衣をまとったカボチャを頬張ると、サクッと音を上げて甘くホックホクの実が湯気を上げて顔を出す。

この軽やかさのある天ぷらは、訪れた際にはぜひ召し上がってみてほしい。

ありま館

ありま館

「旧奥州街道 有壁宿」をひとしきり歩いて散策したら、ちょうど街道の中心部にあたる「ありま館」でゆったり至福の時間を過ごすのがおすすめ。ありま館はぬくもりのあるフィンランド・ログハウスの喫茶店で、淹れたての珈琲と地元有壁の食材を使用した手作りケーキなどの軽食が楽しめる。

ありま館店内

店内に入ると目に飛び込んでくるのが、ゆらめく炎を携えた薪ストーブに周りを取り囲んでいるぬくもりのある木目模様の壁。釘を使わずに仕上げたという、ご主人こだわりのログハウスだ。2008年創業の同店は建物を建築する際に『旧奥州街道沿いにログハウスは似合わないんじゃないか』と悩んでいた時期があったそう。しかし奥様と一緒に思い切ってオープンすることを心に決め、現在は地元を含めて県内外から多くのお客さまが訪れる人気の店舗であり、地元の方々の交流の場としての役割も担っている。

佐々木さん

お店のご主人は有壁のまちあるき案内人などをしている佐々木さん。まちあるきの時は参加してくれる方に少しでも江戸時代の雰囲気を味わってもらうために、菅笠(すげがさ)をキリッと被り、凛々しい旅先案内人の姿に!一方で、ありま館に戻りお気に入りの前掛けを締めれば・・・、やんわりとした喫茶店のマスターに早変わり!なんでも出来てしまう達人なのだ。

萩野酒造の酒粕ケーキとコーヒー

同店おすすめメニューは、奥さまの手作り「萩野酒造の酒粕ケーキ」だ。ふんわりと香る日本酒のフルーティーで上品な香りと、まるでバスクケーキのような美しい焼き目がチャームポイント。フォークを入れる前から、しっとりと滑らかな食感が想像できてしまうほど、ケーキの断面はみっちりときめ細やか!

 

『チーズは入れてないの。萩野酒造さんの酒粕は本当に香りが良くて、ケーキとして焼いてもちゃんとお酒のいい香りがするのよね。』

 

奥さまの言う通り、一口頬張った時のしっとり具合からチーズが使われているのかな?と想像してしまうのだが、実は酒粕の効果。そして焼いても日本酒の香りは飛ばずに、ほのかに残って絶妙な具合だ。すごい!

櫛田さん

「酒粕」というとスーパーマーケットで販売しているのを見かけるが、なかなか常に活用して食すには難しいイメージの食材だ。そこで利用が限定されがちな酒粕を活用しようと立ち上がったのが、もう一人のまちあるき案内人の櫛田さん(元有壁地域おこし協力隊)だ。

 

櫛田さんは『もったいないなぁ』と感じるものを、地域のみんなで持ち寄って再利用する「もったいない茶会」を企画し、その活動の中で現在のありま館おすすめメニュー「萩野酒造の酒粕ケーキ」が誕生したと言う。当時は櫛田さんが試行錯誤して酒粕ケーキを焼いてみたそうだが、何度やっても真っ黒!見かねた佐々木さんの奥さま(ありま館)が改良を重ねて、最終的に現在のケーキが完成したそう。そんな誕生秘話があるとは!

 

櫛田さんの地域愛から生まれた企画と、奥さまの腕に感謝の気持ちを込めて『美味しいケーキをありがとうございます』の言葉を改めて伝えたい。

手作りおみくじ

そして同店を訪れた際に、是非挑戦してほしいのが佐々木さんご夫婦が考案した「手作りおみくじ」。くじを引く時には、ありま館とっておきの「秘密兵器」が登場するぞ・・!

 

筆者おすすめの立ち寄りタイミングは、有壁地区散策の「最後」。たっぷりと街道を歩きちょっと足腰が疲れた頃合いに、ホッと安らぐ空間で美味しいケーキを楽しんでみよう!そして一日歩き回って見てきたものや、感じたことをお店のご夫婦に話をしてみると、きっとより素敵な時間を過ごせるぞ。